よしおくんの日記帳

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― てのひらまつりそのⅢ ― 「長瀞メンコ大会」

      てのひらまつりの二日目。

      昨日は「ひぐち」騒ぎで夜着いて、のぶちゃんに一通り会場を案内してもら
      ったが、暗い電気の下、昔の夜店のようで、郷愁をそそるものがあった。
      ただあのカーバイドのくさい臭いがしないのが物足らなかった。

      寝る前にコーヒーを飲んだせいで、目が冴えて寝つくまでに何度もトイレに
      起きた。
      こういう時に老いを感じる。


      この日朝からもう一度会場を見て回る。

      「てのひらまつり」って、どういう意味だろうと思っていたが、てのひらを使っ
      て物作りをする人々の祭りだそうだ。
      
      私は百姓なので、やはり手のひらを使って米や野菜を育てる。
      仲間に入れてもらえる資格がありそうだ。
      
      アクセサリーや小物の装飾品、草木染等の店が多い。
      他は食べ物、飲み物関係だ。

      殆ど若い人達で、既存の社会に飽き足らず、もう一つの生き方をしている人
      が多い。
      
      手のひらというのは、物を育てたり、作り出せるばかりでなく、水をすくうこと
      もできるし、光を受け止めることもできる。
      火にかざすこともできる。
      両手を合わせて祈ることもできるし、手をたたいて人を称賛することもできる。

      人間らしさを表現する大切な器官。
      その手のひらをもう一度しみじみ見つめた時、ちがう人の生き方、社会のあ
      り方が見えてくる。


      文明が高度になればなる程、工業化が進めば進む程、目線を低くして、生
      き物の私に戻らなければならない。
      近代人こそ手のひらと赤い糸でつながらなければならない。(と私は百姓を
      しながらずっと思ってきた。)

      会場を一周回って、知り合いもなく、手もちぶさたで主催者のテントにいると、
      メンコを研究しているという人が来た。
      ケンゴさんがその人にあげるのだといって、古いメンコをもってきた。
      図柄は戦争もので、戦前のやつである。
      それも四角ではなく、丸い。

      「私が珍しいベッタンやなあ」というと、その研究家は「メンコのことをベッタン
      というんですか。どの地方ですか」とペンと手帳で迫ってくる。
      
      「大阪近郊ではみんなそう言うがな」
      大阪弁で答える。

      いい話し相手が見つかったので、ベッタン談義をしながら自慢話をする。
      
      ベッタンはベッタともいうが、トランプ程の大きさで、トランプより少し厚い。
      色んなゲームがあるが、自分の玉で相手の玉を裏返しにする技術が基本
      になる。上手に風を送ると裏返しになるどころか、くるくると飛んでいく。
     
      私は子供の頃、この技量が人一倍すぐれていて、近所の子供たちのベッタ
      をみんな巻きあげたことがある。
      しかしそれでは遊べないので、台の上に上って、モチまきみたいにベッタま
      きをして、みんなの手元に返し、またそれを巻きあげるのである。

      上級生ともよく勝負したがたいてい私が勝った。
      しかし何しろ相手は上級生なので、機嫌をそこねさせると怖い。
      小学生の二、三学年の差は大きい。
      
      そこで私は注意深く勝つのである。
      あまりこれ見よがしには勝たない。
      いつの間にか勝っていたという勝ち方をする。
      
      もうお解りでしょう。
      勝ち方まで手の内にある。
      それ程私は強かったのです。

      世界ベッタン大会があったら優勝する自身がある、と言うと研究家は信用し
      ない。

      それじゃここでベッタン大会をやろうということになり、研究家の用意した四
      角のものを使うことになったが、これが普通のより少し厚い。
      ベッタンの厚さは重要で厚過ぎても薄過ぎでもだめで、程よい厚さというも
      のがある。
      私はこの厚さだと自分の実力が発揮しにくいと思い大いに不満だったが、他
      に代るものがないのでシブシブ承知。
    
      最初四、五人で始めるが、他の人の打ち方を見ていると全員素人だ。

      真直ぐ打ち降ろしても風は送れないし、斜めの角度がきつ過ぎても玉は横
      すべりしてしまう。
      打ち降ろす強さも、強過ぎても弱過ぎても風は生じない。

      それには膝を使うのである。
      打ち降ろす瞬間に膝を折る。微妙な角度と微妙な強さで打ち降ろされた玉が
      相手の玉に寄り添うように、地面にへばりつく。
      まるでベッタンの裏に足が生えたように。
      この時、玉に気をこめ、その気を地面に閉じこめるつもりで打つ。
      というより実際に気を閉じこめ、全て相手の玉に向わせるのである。

      もう一つは、相手の玉に対してどういう方向から打つかということである。
      すき間の出来ている方向から打たないと、相手の玉に風の影響が届かない。
      
      そういうことが身体化され、頭に入っていなければ、私とは勝負にならない。

      連続で三枚返し、最後の二枚をいっぺんに返した時、見物人の「オー」という
      声。
      
      あんまりみんな下手なので、多少解説すると、研究家は「そうなんだ。メンコ
      は科学なんですね」
      「そんな大げさなもんやおまへん。掛け算できんうちからベッタンできました。」

      そのうち参加者も増え、「てのひらまつり」の番外イベントになる。

      いつしか私はみんなから「師匠」と呼ばれるようになり、研究家も私のホラ話
      が本当だったことを認め、第一回長瀞メンコ大会も無事幕となりました。


      めでたし、めでたし。



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    てのひらまつりブース

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                                      メンコ
      
      

      
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by kumanodeainosato | 2009-07-01 16:49 | てのひらまつり