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よしおくんの日記帳

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神経症体験5

―初めての市場出荷―

 生産物は最初の頃は、妻が自転車の後に積んで、近所の住宅を回り、売り歩

いてくれた。しかし収穫物が多くなって、とてもそれでは追いつかなくなり、市場

出荷を考えなくてはならなくなってきた。


 忘れもしない初めて出荷した時のことである。キュウリを四つのクラスに分けた

のだが、出荷するには、上物ばかりの方がいいと思い、小売用に一番下のクラス

を残し、上の方を秀、優、良と分けて出荷した。初めてプロの仲間入りをしたという

意識で、次の日、仕切りのお金をもらう時、胸がふくらんだが、その額を見てペチャ

ンコになった。

今でもはっきり覚えているが、秀が十二円、優が八円、良が一円だった。その上、

手数料プラスαで、そこからまだ一割引かれる。因みに四番目のランクのは、一

本十五円の小売りで全て売り切れたのである。


 それからも懲りずにトマト、キャベツ、水菜、レタス等を出荷したが、やればやる

程馬鹿馬鹿しくなって、これはもう自分で小売するより他はないという結論に達した。


 市場という所は荷を確保するため、大型産地のものや、常連農家の品物にはそ

こそこの値をつけるが、たまにしか持っていかない農家のものはいくら新鮮な地場

野菜であっても買いたたかれる運命にある。


 その一方で、市場はとにかくいい品(見映え)を持ってこいという。市場の手数料は

八・五パーセントと決まっているので、商品価値の高いものを扱わねば儲からない

のだ。その結果、農家は生産量を上げるより、秀品率を高めることにより労力をさく。

そのために使わなくてもいい農薬を使ったり、大きさを無理に揃えたり、余計なシー

ルを張ったり包装したり、どうでもいいことにびっくりする程の手間をかけるのである。


つづく
by kumanodeainosato | 2011-02-07 15:12 | 神経症体験